Main Menu

トヨタ 「終身雇用」を悪

トヨタ、お前もか。「終身雇用」を悪とする愚かな三流経営の末路

「終身雇用=悪」とする三流経営

トヨタ自動車の豊田章男社長が都内で行った記者会見の内容が物議をかもしています。

「今の日本(の労働環境)を見ていると雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘し、「現状のままでは終身雇用の継続が難しい」との見解をしめしたのです。

終身雇用を巡っては、経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)も7日の定例会見で、「企業からみると(従業員を)一生雇い続ける保証書を持っているわけではない。制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言していました。

両者とも日本のトップメーカーでさまざまな挑戦をしている企業です。その企業でさえ長期雇用に言及せざるをえないとは…。このままで日本は大丈夫なのでしょうか。

おそらくお二人とも、色々な角度から考え、チャンレジし、未来を見据えた上での発言だとは思います。

しかしながら、失礼承知で言わせていただくと、働く人たちとの信頼関係で成立してきた長期雇用(終身雇用)という心理的契約を語るのに、経営者が「インセンティブ」とか「保証書」という言葉を用いることが、どうにもしっくりときません。

そもそも長期雇用は雇用制度ではなく、経営哲学なのではないでしょうか

働く人たちが安全に暮らせるようにすることを企業の最大の目的と考えた経営者が「人」の可能性を信じた。

「あなたの人生にちょっとだけ関わらせてね」という経営者の思いが、従業員の「この会社でがんばって働こう。この会社の戦力になりたい!」という前向きな力を引き出し、企業としての存続を可能にしてきました。

私はこれまで講演会や取材で全国津々浦々数多くの企業にお邪魔し、その数は1,000社を優に超えていますが、高い生産性をキープし続けている長寿企業は、例外なく長期雇用を基本としていました。

私の尊敬している経済学者であり、東京大学大学院経済学研究科の藤本隆宏先生も、「カネ、カネ、カネの経営は古い。経済の最先端は人だ」と断言します。

「現場の人を大切にする、経営者は従業員を絶対に切らないように走り回る。仕事がなけりゃ、仕事を作るのが経営者の仕事だ」と、世界中の現場を見て周った経験を交え、藤本先生は明言します。

つまり、問題は「長期雇用」にあるのではなく、長期雇用の利点を生かせない経営手法に問題があるのではないか。私にはそうとしか思えない。申し訳ないのです。

長期雇用は健康社会学では「職務保証(=job security)」と呼び、次の2つの確信を働く人が感じることで成立します。

第1に、「会社のルールに違反しない限り、解雇されない、という落ち着いた確信をもてる」

第2に、「その働く人の職種や事業部門が、対案の予知も計画もないままに消滅することはない、と確信をもてる」

真の職務保証は、「今日と同じ明日がある」という安心であり、働く人自身も「ルールに違反しない」という責任を全うしなくてはなりません。

人間は守られすぎるとその温室に依存し、無気力で、無責任な存在になるという側面も持ち合わせているので「会社のルールに違反しない」という責任の明確化は必要不可欠です。

「会社が求める責任を、自分が果たせば解雇されない」という安心があれば、新しいことをやろうという気持ちも芽生えます。その確信が「もっと技術力を高めよう」「もっと成果を上げよう」という前向きな気持ちをもたらし、それが「責任」につながります。

つまるところ、経営者の方から長期雇用を放棄するような発言をすることは経営を放棄してるようなもの。人の力を信じない経営者が率いる企業に、未来があるとは思えません。

かつてOECDが行なった労働市場の調査でアメリカやイギリスでは流動的な労働市場が成立してる一方で、ドイツやフランスは、日本と同じように企業定着率の高い長期雇用慣行が形成することで、生産性を向上させていることがわかっています。

現場一流経営三流――

1990年代後半、製造業を研究フィールドにする経済学者や経営学者たちは、密かに、そして好んで、こんな言葉を使いました。

高度成長期に世界を圧巻したモノ作りニッポンの存在感は、ヒュンダイなどの台頭で失墜。その元凶こそが経営者であり「社長さんたち、もっとしっかりしてくれよ」という願いを込めた言葉でした。

“三流”などとや揶揄されぬよう、社長さんたちにはがんばってほしいです。







コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。